TVマン見た「絶滅危惧種と暮す民族」驚く日常(後) 2時間のトレッキングで見つけた「景色」「真実」
東洋経済オンライン / 2024年4月27日 8時2分
世界36カ国を約5年間放浪した体験記『花嫁を探しに、世界一周の旅に出た』が話題を呼んでいるTVディレクター・後藤隆一郎氏。
その後藤氏が旅の途中で訪れた、ヒマラヤ山脈にある辺境の地、チベット仏教の聖地「スピティバレー」で出会った「標高4000mに暮らす人々」の実態をお届けします。
*この記事の前半:TVマンが見た「絶滅危惧種と暮すチベット民族」驚く日常(前編)
*この記事の続き:TVマンが見た「絶滅危惧種と暮すチベット民族」驚く日常(中編)
ロバ、馬、そして「ゾ」
村の中心を離れピン川に近づくと、あふれんばかりの干し草を積んだロバを見かけた。
【写真で見る】敏腕TVマンが見た!「絶滅危惧種と暮すチベット民族」驚きのリアルな日常 2時間のトレッキングを経て見つけた「景色」と「真実」とは?
ロバを引く中年の男性の横で、もう一人の男が薪を背中に抱えて歩いている。その向こうには、田園で働く農民の姿が見える。手刈りで収穫した大麦を、家畜に踏ませて脱穀しているようだ。
家畜の一匹はロバだが、もう一匹は見たことのない動物で、牛でもヤクでもない。
現地では「ゾ」と呼ばれる家畜だと農民が答えた。「ゾ」はヤクとウシの交雑種で、主に農耕のために使用される家畜だという。
ヤクは成獣になるまで時間がかかるので、補完するために作られたとのことだ。
カナさんの提案で、部屋の窓から見えたピン川の渓谷に行くことになった。染物に使う野生植物を探したいらしい。
彼女がスピティに来た目的は、チベット仏教の僧侶が着ている赤い袈裟を染める植物を手に入れ、染物を作るため。
寺院で聞き込みをし、1週間近く山々を歩き回り、探しているが、まだ見つかっていないらしい。
体が順応できていない中、2時間にわたるトレッキング
それから2時間にわたるトレッキングが始まった。
緑のじゅうたんに見えた渓谷沿いは、近づいてみるとゴツゴツとした茶色い岩で覆われている。途中、山から流れ込む小さな小川があり、岩をピョンピョンと跳ねながら奥地に進んだ。
1時間ほど歩いたところで完全に息が上がった。カナさんは野草探しに夢中で、こちらの様子が目に入っていない。
「カナさん、ちょっと休まない?」
スピティに来て4日目の俺は、まだ、高地の酸素の薄さに体が順応できていない。二人で座って、雄大な山々と綺麗な水が流れるピン川を見た。
絶景を眺めながら至高の一服
インドから持ってきたライターに火をつけて煙草を吸おうとしたが、風が強いうえに空気が薄いため、なかなか火がつかない。
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