10cm以上にもなる巨大単細胞生物ハネモ、全ゲノム解読に成功 名大ら
財経新聞 / 2024年4月24日 9時32分
名古屋大学は22日、10cm以上にもなる巨大単細胞生物ハネモの全ゲノムを、高精度で解読することに成功したと発表した。
ハネモは、海藻の1種であるが、単細胞生物でありながらどのようにしてその巨大な体を形づくっているのかなどは、わかっていないことが多い。
今回の研究成果はそのような謎の多いハネモの性質について、遺伝子レベルで迫るものだ。
■ハネモとは?
ハネモは、海藻の1種だが、謎が多い。たとえば、ハネモは単細胞生物だがその大きさは10cm以上もなる。これは普通の動植物の細胞の1000倍にもなる大きさだが、どのようにしてその巨大な体を形づくっているのか、全くわかっていない。
またハネモは、海中に広がった細胞質(細胞の内容物)から元通りに再生することができるが、その驚異的な再生能力の仕組についても、ほとんどわかっていない。
しかしハネモのような海藻のゲノムを解読することは難しい。これは海藻と共生している微生物のDNAと、海藻自身のDNAを区別することが難しいためだ。
今回、研究グループは、ハネモについて室内での安定的な培養方法を確立すると共に、培養中に減菌するなどして、ハネモの全ゲノムの解読に成功した。
■遺伝子レベルでハネモの謎に迫る
その結果、ハネモの性質の謎に迫るいくつかの遺伝子的な特徴が明らかになった。まず、ハネモが原形質から再生するときに、原形質の凝集に関係する遺伝子「BPL-1」が15個もみつかった。再生能力が弱い他の大型緑藻では、この遺伝子は全くみられないという。
研究グループによれば、「BPL-1」が大規模に重複することによってハネモの驚異的な再生能力が維持されている可能性があるという。
またハネモでは、キネシン遺伝子が34個もみつかったが、ミオシン遺伝子は1個しかみつからなかった。
これらの遺伝子はいずれも細胞内における物質の輸送に関係しているが、他の大型緑藻では、ミオシン遺伝子の方が多くみられる。
このことからハネモにおける細胞内の物質の輸送は、キネシンー微小管系が中心になっている可能性があるという。
研究グループでは、今回の研究成果によって、高精度のゲノム情報が少なく、他の動植物に比べ研究が遅れている藻類学について新たな発展が期待できるとしている。
なお今回の成果は、東京工業大学と国立遺伝学研究所との共同研究によるもので、科学雑誌「The Plant Journal」に2024年4月21日付で掲載された。
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