「最後の転職にしたい」と思わなくてもいい。実は「失敗」も「成功」もない“転職”の考え方
オールアバウト / 2024年5月10日 21時50分
転職回数が増えることに対して、ネガティブなイメージを持っている人は多いかもしれない。しかし、「転職は当たり前」の社会となった今、転職回数の多さの良し悪しについても、時代とともに変わってきている。
「これを最後の転職にしたい」と思ったことはないだろうか。特に転職回数が多くなり、転職活動の度、過去の会社の退職理由を根掘り葉掘り聞かれた経験のある人ならば、転職回数をこれ以上増やしたくないという思いを持つかもしれない。
面接官としても、転職回数が多い人に対して、その人を採用して長く会社で働いてくれるかという懸念、ネガティブなイメージを持つ人もいるだろう。
転職でキャリアアップを実現するのは大いにプラスであるが、転職回数の履歴で損をすることがあるのだとしたら、もうこれ以上転職はしたくないと考える人がいるのも自然なことである。
一方で最近は、「転職は当たり前」の社会となってきた。終身雇用を前提にした中途採用をする会社が今、どれほどあるのだろうか。人材不足は深刻であり、転職回数を気にしているほど余裕がないケースもある。時代とともに変わってきた転職回数の多さの良し悪しについて、人材コンサルが考える。
代表的な3つの転職理由とは何か
転職をする理由は、大きく分けて次の3つに分類されてきた。1つ目は現状の仕事内容や職場の人間関係、自分に対する評価や待遇などに満足していないケースだ。多くの人はこれらの要素の1つ、もしくは複数に不満が生じて転職活動を始める。2つ目は、転勤などで物理的に居住地が変わることになった場合、生活圏を変えたくないために転職活動を始めることがある。実際、そうした理由で転職をする人が増えているがゆえに、エリア型採用とグローバル採用というように、全国や海外転勤がある職域と都内職域などで分けた採用が実施されている企業もある。
3つ目は、キャリアの継続性が実現しない時に転職する場合だ。いわゆる不本意な異動というのは勤務地だけにかかわらず、自分が取り組んできた仕事が変わることも含まれる。特に専門性の高い職種に就き、その分野で長期的なキャリアを築いていきたいと考えている人は、キャリアの継続性が断絶することが転職理由となる。
例えば人事の仕事をしてきた人が営業部門に異動になった時、転職先で人事の仕事を継続するという具合である。
終身雇用を前提で考えた場合、社内異動で勤務地や担当する職種が変わるたびに転職する人は少ない。不本意な異動が起きることは珍しいことではないが、多くの場合は異動を受け入れて、新しい部署で再出発をするものだ。
しかし転職が浸透している今、キャリアの継続性や生活拠点の固定を重視して、不本意な異動が転職活動の引き金となることは、以前より増えているだろう。企業にとっても、人事異動を決める際には、覚悟と配慮をしなければならない時代を迎えている。
転職回数の多い人は、「転職に失敗している」?
では、人が転職を繰り返す理由と、転職回数の多さにネガティブなイメージがある理由は何であろうか。転職には成功もあれば失敗もあると考えれば、「転職に失敗したからまた転職をする」のだろうとの考え方になりそうだ。転職回数が多い人は本人に何らかの問題があるなど、転職者に対してネガティブな印象を持つ面接官もいる。特に転職経験がない面接官の場合、偏った見方をしてしまうこともあるのだろう。
例えばそうしたタイプの人は、「転職回数が多い人は自己都合退職を繰り返しているわけだから、会社としては使いづらい」と考えていることもある。
また、「転職回数が多い人は職場の人や顧客との人間関係構築に問題があるのではないか」と勘繰る面接官もいる。これらは、かなり偏見が強い見方ではあるが、実際にこのように考えている人が少なくないのは事実である。
転職には「失敗」も「成功」もない
しかし一方で、転職回数を気にしない人も多く、最近そのような考え方は増加傾向にある。筆者としても、「転職は何度繰り返してもいい」と考える。面接官でも、転職をする人でも、転職回数を気にしないという人の話を聞いてみると、「転職には失敗も成功もない」という考えを持っていることに気づかされる。仕事とは、「1つの仕事をやり切ったかどうか、役割を果たしたかどうか、そのような指標で考えるものだ」という考え方である。
もちろん職場の環境に良し悪しがある場合もあるだろう。ただし、どこで働くにしても自分がやるべき仕事や期待されている貢献があり、仕事をやりきることが社員の役割である。つまり、仕事に対してどれだけプロ意識を持てているか、そこがポイントである。
この考え方に立てば、「仕事をやりきったから、与えられた任務を全うしたから転職した」というポジティブな転職だってある。
自分を求める会社があり、そこに仕事があれば、あとは自分がやるかどうか、それを決めるだけのことである。「転職」にフォーカスするのではなく、目の前の「仕事」にフォーカスする。
その仕事をやりきること、期待に応えること、報酬をもらってその役割を全うするというプロとしての自覚があれば、「これを最後の転職にしたい」と思わなくてもいいのである。
同じ職場で次々にやりきりたい任務が見つかれば結果的に長く同じ職場にいることになり、その転職が最後になるかもしれないし、あるいは、何度転職したとしても、その度、仕事をやりきり、人の役に立っている、そのようなキャリアだっていいのである。転職回数の多さに囚われすぎず、自分らしいキャリアを見つけていってほしい。
(文:小松 俊明(転職のノウハウ・外資転職ガイド))
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