「ミニ腸」を用いて新型コロナウイルスの増殖性、病原性を検証
Digital PR Platform / 2024年3月28日 10時0分
【研究概要】
➀ウイルスの増殖性と、細胞傷害性について
デルタ株、オミクロン株(BA.2、BA.2.75、BA.5、XBB.1)のウイルスをミニ腸に感染させ、ウイルスの増殖性を時間の経過にそって調べました。その結果、すべての株が腸への感染性を示しました(図1)。特に、デルタ株とオミクロン株BA.2.75では高い増殖性を示し、感染に伴って分泌される炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)の量が高いことが分かりました。一方で、BA.2、BA.5、XBB.1では腸での増殖性が低く、これらの株を感染させたミニ腸からは、抗ウイルス活性を有するIFN-λ2が多く分泌されていました(図2)。
➁持続的な感染について
次に、感染の持続性について調べたところ、デルタ株やBA.2.75を感染させたミニ腸では、感染後30日が経ってもウイルスの増殖が続いていて、持続的な感染が強く示されました。これらの株を感染させたミニ腸へサイトカインの一種であるIFN-λ2を投与することによって、ウイルスの増殖を短期および長期にわたって抑制できるかどうかを検証した結果、IFN-λ2はデルタ株およびBA.2.75におけるウイルスの増殖を抑制させました(図3)。これは、腸のIFN-λ2がウイルスの増殖を抑制させる働きを持つ可能性を示唆しています。
【研究者コメント】
本研究では生体に近い立体臓器を用いることで、SARS-CoV-2の短期と長期の感染を多角的に捉えることに成功しました。SARS-CoV-2の持続的な感染はコロナ後遺症の要因の一つと考えられています。今後は、腸に潜伏するウイルスの排除に焦点を絞って、IFN-λ2のウイルス増殖を抑制させるメカニズムと、腸における免疫を活性化させる具体的な方法を提案することで、エビデンスベースドなコロナ後遺症予防法の確立を目指します。
また本研究では、ミニ腸が生体内におけるウイルス感染ダイナミクス、宿主応答を再現できる革新的なヒト腸管バイオモデルであるとともに、SARS-CoV-2の短期と長期という2つのフェーズの感染を観察することのできる有用なモデルであることが分かりました。
【発表論文情報】
タイトル: Replication efficiency of SARS-CoV-2 Omicron subvariants BA.2.75, BA.5, and XBB.1 in human mini-gut organoids.
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