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人生100年時代の目線 その2 広がる経済格差とこれからの年金

Japan In-depth / 2024年4月5日 18時0分

 今回の改正で差し迫った課題になっているのは



国民年金保険料の加入・支払期間を65歳までの45年間に延長する
少子高齢化によって年金支給額を抑制するマクロ経済スライドの延長
パート従業員などの厚生年金への加入拡大-等。

 そのほかにも、勤労者が65歳以上も働き続けると年金支給額が抑制される在職老齢年金の見直し、勤労者の夫の厚生年金から被扶養者の専業主婦が受け取る妻年金、いわゆる第3号被保険者問題などがある。


年金受給額の目標値を示す指数を所得代替率と言う。前回2019年の財政検証で加入期間を5年延長すると現役時代の所得に比して50・8%から57・6%まで回復すると、試算されている。


在職老齢年金については、厚生年金加入者が対象で、厚生年金は国民年金に当たる老齢基礎年金と、2階部分の報酬比例部分の2階建て方式。


定年後も働き続ける年金受給者が増えている。その場合、在職老齢年金という制度で給与と年金の合計額が一定の額を超えると、年金支給額が減額される。減額されるのは厚生年金の2階部分の報酬比例部分で、1階部分の基礎年金は減額されない。


これまで給与と年金の合計額が48万円を超えると減額されていたが、2024年度からは50万円に引き上げられる。このため年金が減額されないよう、働き方を調整し、雇用者も年金が減額されない範囲で給与を調整するケースが多い。


働く高齢者の意欲を高めるため、在職老齢年金制度を廃止する議論もある。ただ給与と年金の受給額が多い人は減額されずに済むため、年金財政の支出が増え、高齢者間の所得格差が進む。今後の課題だろう。


また現在原則65歳からの満額受給年齢の延長も議論されている。このほかパート従業員などで厚生年金加入要件の106万円の根拠になっている週20時間以上の勤務や月収8万8000円の引き下げや撤廃で、資格を広げて厚生年金加入者を増やすプランも現実味を帯びている。


そのほか勤め人の夫に扶養されている年収が130万円未満の専業主婦は厚生年金、社会保険が妻の分も含めて納める。いわゆる第3号被保険者問題で、それを超えないよう働き止めなどで調整している。一定以上の所得がある共稼ぎ妻や、自営業者の妻との不公平感があり、課題となっている。


また国民年金月額6万6千円余だけを受給している高齢の単身女性、非正規労働経験者などは、生活できないとの意見が数多くある。コロナ以降、生活保護受給者も年々、増えている。働く時間や形態に関わらず厚生年金加入者をもっと増やすなどこれらの改革案は、今後の議論の推移を見守る必要がある。


国民年金の半額は国費が負担するが、加入期間の延長は国民年金だけの加入者の保険料負担がさらに増す。また厚生年金は雇用企業も報酬に応じて折半の負担が増える。厚生年金加入者の拡大に対し、大企業でも経営面で海外競争力に影響するとの消極論もある。


これらの課題をどう克服し100年間は安心できるとの公的年金キャッチフレーズを維持してゆけるのかが問われている。


株高、賃上げの好循環で、税収増が期待できるなら、せめて高齢者や経済格差のある人たちの社会保障費負担増の悪循環にストップをかけて、社会保障制度全体の在り方・内容を根本的に改革する必要がある。


次回は人生100年時代における公的介護保険の適用年齢になる65歳からの介護環境について見てゆきたい。      


(その3につづく。その1)


トップ写真:イメージ


出典:iStock / Getty Images Plus


 


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