米シンクタンク、大統領選挙は共和党副大統領候補に注目、スーパーチューズデー終え(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月11日 11時0分
2024年11月の米国大統領選挙に向けた、民主党・共和党の指名候補者を選出する予備選挙は、3月5日に1つ目の佳境のスーパーチューズデー(注1)を終えた(2024年3月7日記事参照)。予備選の結果に対する首都ワシントンのシンクタンクの分析の一部を紹介する。
ピュー・リサーチ・センターは3月7日、民主党ではジョー・バイデン大統領が15州全州で勝利、共和党ではドナルド・トランプ前大統領が15州のうち14州で勝利し、指名獲得をほぼ確実としたことについて、現在の予備選の仕組みができた1970年代以降で「最短期間で決着した予備選の1つだ」と振り返った。これまでの最短記録は、2000年大統領選に向けてジョージ・ブッシュ氏(共和党)とアル・ゴア氏(民主党)に決着した同年3月9日で、これより早まったとした。
他方で、予備選が過去最短期間で事実上終了したことが、両候補者への高い支持を示すものとは受け止められていない。保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ・公共政策研究所(AEI)シニアフェローのマーク・ティッセン氏は、「ワシントン・ポスト」紙(3月6日)への寄稿で、バイデン氏は世論調査の結果を見ると史上最も不人気な大統領だが、トランプ氏もほぼ同じぐらい不人気だとして、「今回の大統領選は不人気投票になる」と指摘した。また、トランプ氏がスーパーチューズデーを経て指名獲得に前進していることを「トランプ氏にとって良い状況だ」としつつ、予備選でニッキー・ヘイリー氏(元国連大使)を支持した共和党有権者や、特定の支持政党を持たない浮動層から嫌われない努力をしなければいけないとした。具体的には、トランプ氏の政権運営を経験した上で今回は支持しない「ノット・トランプ・アゲイン」層を取り込む必要があるとして、トランプ氏の副大統領候補者には、共和党有権者のあらゆる層に広くアピールできる人物を選ぶ必要がある、などと指摘した(注2)。
ブルッキングス研究所は3月6日、スーパーチューズデーの結果に関するパネルディスカッションを実施した。登壇した保守系ニュースサイト「ザ・ブルワーク」編集長のビル・クリストル氏も、ヘイリー氏が撤退表明と同時にトランプ氏への支持を表明しなかったことを踏まえ、その支持層の動きが重要になるとして、「彼女はこの大統領選において大きな不確定要素だ」と述べた。また、ブルッキングス研究所シニアフェロー(ガバナンス担当)ガブリエル・サンチェス氏は、ミシガン州での民主党の予備選挙を振り返り、バイデン氏が過半数を獲得したものの10万人以上が「支持者なし(uncommitted vote)」で投票し、これはバイデン氏への「抗議票」を意味すると述べた。主に、「イスラエル・パレスチナ問題」のバイデン政権の対応を批判するイスラム系有権者や若年層有権者の支持を得られていないと指摘した。他方で、ヒスパニック有権者の投票結果をみると、テキサス州南部の選挙区で、バイデン氏のパフォーマンスが2020年予備選挙より改善していると指摘した。移民問題が選挙の大きな争点になっていることを踏まえて、トランプ氏が「不法移民」をヒスパニック有権者に拡大解釈するような扇動的な言葉を使った場合、この傾向は特に顕著になるとの見解を示した。
ジェトロの特集ページ「2024年米国大統領選挙に向けての動き」では、大統領選挙に関する最新動向を随時紹介している。米国主要メディアの報道事例は2024年3月7日記事参照。
(注1)近年、大統領選挙年の2~3月の火曜日に集中して予備選挙が行われることが慣例化しており、スーパーチューズデーと呼ばれる。今回、民主党・共和党ともに予備選挙が行われたのは、アラバマ州、アーカンソー州、カリフォルニア州、コロラド州、マサチューセッツ州、メーン州、ミネソタ州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、テネシー州、テキサス州、ユタ州、バージニア州、バーモント州。民主党のみはアイオワ州、米領サモア。共和党のみはアラスカ州。
(注2)米国フォックスニュースが2月20日に開催した集会において、トランプ氏は副大統領候補者に、ロン・デサンティス・フロリダ州知事、ティム・スコット連邦上院議員(サウスカロライナ州)、ビベク・ラワスワミ氏(実業家)、クリスティ・ノーム・サウスダコタ州知事、バイロン・ドナルズ連邦下院議員(フロリダ州)、トゥルシー・ギャバード元下院議員を挙げた。
(葛西泰介)
(米国)
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