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北大、鉄を微量に含んだ二次元層状物質における超伝導磁束の液晶状態を観測

マイナビニュース / 2024年5月9日 16時59分

画像提供:マイナビニュース

北海道大学(北大)は5月8日、二次元層状物質である遷移金属「ダイカルコゲナイド化合物」に微量の鉄(Fe)原子をインターカレート(層状物質の層間への他の原子や分子の挿入)することで、超伝導磁束の液晶状態とそのダイナミクスの観測に成功したことを発表した。

同成果は、北大大学院 理学研究院の延兼啓純助教、同・大学大学院 工学研究院の丹田聡名誉教授(現・同・大学大学院 理学研究院所属)らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物性物理とその関連分野全般を扱う学術誌「Physical Review B」に掲載された。

ダイカルコゲナイドはMX2(M=ニオブ(Nb)、タンタルなど、X=硫黄(S)、セレン、テルルなど)で表され、外部圧力、非磁性原子・有機物をインターカレートすることで低次元性が制御され、超伝導と電荷密度波とが競合・共存している物質群として知られている。

しかし、一般的には磁性原子が層間に侵入すると超伝導が抑制されてしまうため、MX2の超伝導研究ではあまり行われてこなかったという。研究チームでは、ランダムな局在磁性スピンをインターカレートした場合、層状MX2超伝導体にどのような影響を及ぼすのかを調べるための研究を進めてきたとする。その結果、ダイカルコゲナイドの一種であるNbS2に鉄を1%以上封入したFe-NbS2では超伝導が示されず、Feスピンと伝導電子の相互作用による近藤効果やスピングラスの振る舞いが顕著になることを確認済み。そこで今回の研究では、鉄の濃度をさらに希薄にした単結晶を作成し、Fe-NbS2の超伝導特性、および低次元性による電荷密度波形成の可能性などを調べることにしたという。

化学気相輸送法により、鉄を0.08%の組成比で混ぜたNbS2単結晶が作成され、低温・磁場中でのFe-NbS2の超伝導状態の振る舞いが電気抵抗測定により調べられた。外部から電流と磁場をかけると超伝導体中の磁束にはローレンツ力が働き、超伝導体中を動くことで、散逸となり抵抗が発生する。外部電流や磁場の大きさ、方向を制御することで磁束の特徴(相互作用や次元性)、そのダイナミクスを明らかにすることが可能だ。

鉄を0.08%含むFe-NbS2は、鉄を含まないNbS2よりも超伝導転移温度と上部臨界磁場が高温・高磁場側へシフトすることが判明。つまり、微量の鉄をインターカレートした場合、より頑強な超伝導が実現していることがわかったのである。Fe-NbS2は超伝導転移幅がNbS2よりも広くなっており、これは磁束にローレンツ力が働き、運動していることに起因しているという。

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