「本当にそれでいけるのか?」と上司から問われたとき、必ず提案を通せる人がやっているシンプルなこと
プレジデントオンライン / 2024年4月5日 9時15分
※本稿は、濱田秀彦『あなたが上司から求められているシンプルな50のこと』(実務教育出版)の一部を加筆・再編集したものです。
■部下からの提案で、上司が気にしていること
マネジメント研修の講師という仕事柄、様々な企業の部下層の方とお話をする機会が数多くあります。その中でよく聞くお悩みは、「上司に提案しても通らない」「こうしたい、と相談してもOKがもらえない」というものです。部下からすれば、「せっかく提案したのに」という忸怩たる思いになるのは自然なこと。それは、理解できます。こういった話は、「了解しない上司に問題がある」というニュアンスで終わることが多いものです。
一方の上司側の話を聞くと、了解しないのは部下側に問題があるというスタンス。このままでは、問題は解決しません。そこで、まずは上司の状況を分析してみましょう。
リモートワークが普及してから、管理職が部下の動きを正確につかむことは、以前に比べ格段に難しくなっています。部下から提案や相談を受けても、部下の仕事の詳細はなかなかわかりません。それでも、判断はしなければなりません。ここで、まず上司が気にするのは論理的に矛盾がないか、過去の経験から考えて違和感がないか、という2点です。
■目を見て言い切るかで最終判断している
このチェックを通るだけでも大変ではありますが、それは通ったとしましょう。
2点がクリアされても、まだ上司はOKを出せません。詳細が十分にわかっていないため、不安が残るからです。そこで、もう1つ材料がほしくなります。それは、提案や相談をしてきた部下側の覚悟です。
部下側の覚悟を測る質問が「本当にそれでいけるのか?」といったもの。ここで、部下側が「いけます」「やらせてください」と毅然と言えば、交渉は成立。めでたくGOサインが出るわけです。
しかし、部下側がそのように言い切ることは多くありません。一瞬絶句した後、伏し目がちに「できるだけ努力しますが、相手があることですし……」と自信なさげに返してしまいがちです。これでは、せっかく論理的矛盾チェックと経験からの判断という2点をクリアしても、OKまではもらえません。
最後のピースは「目を見て、語尾まできっぱりと言い切る」ということです。
■「目を見て話す」苦手克服のための2つの方法
ここからは、最終的なOKをとるためのカギ「目を見て、語尾まできっぱり言い切る」を実現するためのポイントを考えます。
まずは、「目を見て話す」から。単純なことですが、昨今はこれを苦手にしている部下層の方が増えています。
街中では若者同士がお互いにスマホを見ながら雑談するシーンを、職場でも並んだ社員同士がパソコンを見ながら話すシーンを多く目にします。そんなことから、目を見て話すことに慣れていない人が増えているのでしょう。
全体的な傾向として目力(めぢから)が落ちています。それでは、なかなか説得できません。私の知人にイギリス人の英語講師がいます。彼が言っていたのは「多くの日本人は英語力があるのに、外国人の目をしっかり見て話さないから伝わらない。レーザービームのように相手の目を見て話さないとダメ」ということ。
では、どうすればよいか。目を見て話すのが苦手な方にお勧めしている方法が2つあります。1つは、即効性のある対応で「考える時は視線を切る」ということです。
目を見て話すのが苦手な人にとっては、相手と目が合う状況だけで気詰まり感があります。その上で内容を考え、言葉を作り、発声するというのは負担が大きいもの。だから、考えている間は視線を切って、負担を減らそうという作戦です。
■「相手の眉間や鼻のあたりを見て話す」はダメ
例えば、話の中で「今回の提案の理由は業務効率化である」ということを伝える場合、「なぜ、こういう提案をしようと思ったかというと」という部分は視線を切って話しながら考えをまとめた上で、相手の目を見て「業務効率化のためです」と話す。
さほど不自然な印象を与えることはなく、相手の目を見てキーワードをしっかり話すことができます。
2つめは、即効性はないものの、根本的な解決につながる「目を見て聞く」という方法です。目を見て話すのが苦手な人は、相手と目が合っている状態に慣れていないわけです。だから、慣らします。人の話を聞く時は、受け身で相槌を打っていればよいので、話す時に比べ負担が大幅に減ります。その環境で、がんばって目を見て聞く。
続ければ、目が合った状態で会話することに慣れ、話す際にも楽になります。それに、目を見て聞くことは相手に「あなたの話を真剣に受け止めていますよ」というメッセージを送る効果もあり、一挙両得です。
このように、短期的には「考える時に視線を切る」作戦で進め、中期的には目を見て聞くことで慣らしていくのがお勧めです。
なお、目を見て話すのが苦手な人から「相手の眉間の辺りを見て会話するのはどうでしょう?」「相手の鼻のあたりを見て話すと楽と聞きましたが、それはアリですか?」と質問されることがありますが、それはダメです。百聞は一見にしかず、なので私はいつも質問者にやってみせています。質問者の眉間や、鼻のあたりを見て話してみて感想を求めると、必ず「なんか変ですね」「不自然ですね」といった答えが返ってきます。
正解はレーザービームです。
■「いけるのか?」と聞かれたら「いけます!」一択
上司に提案、説得する際の話し方として語尾はとても大切です。前述しましたが、上司が最後に判断する材料は部下側の覚悟です。その意図がわかっていないと、「本当にこれでいけるのか?」という質問に、事実ベースで「できるだけ努力しますが、相手もあることですし……」と返したら、上司は「覚悟が足りない」と考え、OKは出せません。そこから、部下が説明を加えても効果はなく、時間の無駄になるだけです。
「いけるのか?」と聞かれたら「いけます!」、答えはこれしかありません。
部下層のみなさんにそういう話をすると、「でも『いけます』と言ってダメだったら、マズいじゃないですか」という心配の言葉が返ってきます。その気持ちはわかります。でも、上司はいける確率が知りたいのではなく、覚悟がほしいのです。
■結果がどうあれ、最初に覚悟を示したほうがいい
冷静に比較してみましょう。「いけます!」と聞けば、上司は「覚悟はできているな」と受け取り、言い切った部下に対してポジティブな印象を持ちます。そして、結果が良ければ、「有言実行」と高く評価します。結果が悪ければ、結果に対してネガティブに評価されます。でも、最初のポジティブな印象が消えるわけではありません。
一方、最初に「できるだけ努力します」と聞くと、「覚悟ができていない」とネガティブな評価がなされます。仮にOKが出て、結果がよくても、最初の頼りなさの印象は消えません。もし結果が悪ければ、ネガティブ印象のダブルパンチ。最悪です。
結果がどうあれ、最初に覚悟を示したほうがよいのです。
今回は、上司に提案したり、「こうしたい」と相談したりする際に適した話し方として「目を見て、語尾までしっかり言い切る」ことをお勧めしましたが、そういった場面に限らず、上司に対する話し方は、いつもきっぱり言い切るほうがよいもの。
目を見て「いけます」「やります」「できます」「やらせてください」。このように話す部下は上司にとって頼もしいもの。信頼感が高まります。
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マネジメントコンサルタント
ビジネス書作家。早稲田大学卒業後、住宅メーカー関連会社へ入社、最年少支店長を経て人材開発会社に転職。営業マネージャー、経営企画マネージャーを経て独立。現在は、ヒューマンテック代表。マネジメント、コミュニケーション、キャリア開発のコンサルタントとして講演・セミナーを行う。主な著書に『新入社員ゼッタイ安心マニュアル』『課長のキホン』(以上、河出書房新社)、『主任・係長の教科書』(光文社)などがある。
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(マネジメントコンサルタント 濱田 秀彦)
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