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「身長168cm以上」の男性のがん死リスクが高い…身長低めな人とぽっちゃり体型の人に朗報となる意外なデータ

プレジデントオンライン / 2024年5月3日 10時15分

出所=国立がん研究センターがん対策研究所

男性は高身長に、女性はスリムな体型に憧れる人がいる。果たして、本当に「憧れの対象」と言えるのか。スポーツライターの酒井政人さんが各種統計調査をもとに、「今は低身長とぽっちゃり体型が得する時代かもしれない」という――。

■「高身長」のデメリット、「低身長」のメリット

かつてバブル全盛期の頃、女性が結婚相手の条件に求めたのが、「高学歴」「高収入」「高身長」の“3高”だ。最近はお笑い芸人も他人の外見や容姿をいじるようなネタを封印する傾向にある中、「高身長」だけは依然として人気が高いように映る。はたして身長の高低と人生の損得とは関係性があるのか。

筆者は、身長が170cmに少し足りず、若い頃は高身長への憧れを抱いていた。あと10cm。いやあと5cmほどあれば良かったのにと感じていたが、40代になってからは、そういう思いは薄らいだ。単純な話、電車や飛行機の座席、ビジネスホテルのベッドなど、規定のサイズでも小柄なほうが狭さを感じにくく、小柄・低身長なほうが大柄・高身長よりも“コスパ”が良いと感じているからだ。

身長が低い人のほうが、高い人よりも寿命が長いというデータもある。医師で、東京大学大学院医学系研究科の中川恵一特任教授は日本経済新聞の連載コラムで「高身長ほどがんのリスクが高い」と書いており、がんの発症率は身長で明確な差があるようだ。

中川特任教授はそのコラムの中で、英国の中年女性約130万人を9年間追跡した結果では、大腸がん、乳がん、腎臓がん、悪性黒色腫など10種類のがんで、身長が高いほどリスクが高まることが判明したことを紹介している。身長が10cm高くなるごとに、がん全体で16%もリスクが高まっているのだ。

米国、欧州、韓国の男女を対象にした別の大規模調査の分析結果でも、身長が10cm高いとがん発症リスクは10%上がることが示唆されている。

国立がん研究センターが日本人を対象に実施した疫学研究でも同じような結果が出ている。1990年と93年に登録した40~69歳(当時)の男女、約11万人を平均19年間にわたって追跡したところ、男性は身長が168cm以上の群が160cm未満の群よりがん全体の死亡リスクが17%高く、身長5cmが高くなるごとに4%リスクが増加していたのだ。

喫煙などの生活習慣ががん発症に大きな影響を与えるとはいえ(※日本の研究では男性で約24%、女性で約4%はたばこががんの原因だと考えられている)、身長の低めの方には朗報となるデータになるかもしれない。

なお、この国立がん研究センターの調査では、男性の脳血管疾患による死亡については、160cm未満に比べて168cm以上のほうが死亡リスクが低く、呼吸器疾患による死亡も高身長ほど死亡リスクが低いことが示されており、高身長=死亡リスク大というわけではないようだ

■スリムよりも健康的なぽっちゃり体型がいい

身長だけでなく、体重も新たな局面を迎えている。

高級ブランドなどが「ぽっちゃり体型」の女性をファッションショーに採用するなど、近年は「リアルサイズ」や「プラスサイズ」と呼ばれるモデルが活躍。モデル=スリムという概念は崩れつつある。

モデルの「痩せすぎ問題」は以前から指摘されてきたが、「健康ボディ」はどれぐらいの体重なのか。肥満の程度を表す指標としては「BMI」がある。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算できる値だ。日本肥満学会では

「低体重」18.5未満
「普通体重」18.5以上25未満
「軽度肥満」25以上30未満
「肥満」30以上35未満

としている。

身長160cmなら48~63kg台が、身長170cmなら54~72kg台が「普通体重」になる。しかし、とりわけ日本人の女性は“痩せ願望”が強く、医学的には「普通体型」と分類されても、常に「ダイエットしなきゃいけない」と考えている人が多いようだ。

実際、厚生労働省による国民健康・栄養調査報告(令和元年)によれば、BMIが18.5未満の痩せ体型の女性は20代で20.7%、30代で16.4%、40代で12.9%もいた。

一方で1991年のデータになるが、30~59歳の男女5000人を対象にした調査によると、健康診断で「異常なし」とされた人はBMIが22前後の人が最も多かったという。身長160cmなら56~57kg、身長170cmなら63~64kgだ。

体重だけでいうと、そこまでスリムという感じではないだろう。

体重計
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

また前出の国立がん研究センターが日本人を対象に実施した調査では、40~69歳の男女9万人のなかで、10年間でがんになったのは約5000人。男性の場合はBMI21~29(身長170cmなら体重は約61~84kg)の発症率はほぼ同一で、BMI19未満(身長170cmなら体重55kg未満)と30以上(身長170cmなら体重87kg以上)の方は発症率が上昇することがわかっている(※女性はがんの発症率と肥満度に関連はなかった)。

一般的なイメージと比べて、「ぽっちゃり体型」のほうが健康的といえそうだ。

■なぜ箱根駅伝の選手は本番直前の12月に体調を崩すのか

体脂肪が少ないと体温が低くなりやすいと言われている。そうなると免疫細胞の働きも悪くなり、免疫力が下がって風邪などをひきやすくなってしまう人もいる。

箱根駅伝を目指す選手たちが12月にインフルエンザや胃腸炎などで体調を崩すことが多いのは、追い込みの練習で体脂肪が低下することが要因のひとつだと指摘されている。逆にいえば、少し体脂肪を蓄えていたほうが体調を崩しにくい。

もちろん、BMIの数値ばかりを重視するのは好ましくない。なぜなら健康に寄与する筋肉の量が多いとBMIの数値が高くなるからだ。逆にBMIでは「平均体重」でも、筋肉量が少ない人は注意が必要になるだろう。

筋肉量のピークは20代で、その後は徐々に減少していく。特に下半身は顕著だ。下半身の筋肉量が少なくなると、外出するのが億劫になる。そうなると、ますます筋肉量が低下してしまう。

悪循環に陥らないためにも、若いうちから“筋肉貯金”をして、運動習慣を持つことが大事だろう。ウォーキングよりもランニング。ランニングよりも筋トレ(スクワットやランジなど)のほうが下半身を効率的に鍛えることができる。

自宅での運動
写真=iStock.com/SunnyVMD
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SunnyVMD

日本陸上競技連盟は2021年からアスリートの身長・体重については非公開とし、収集も控えることを基本方針としている。個人情報保護の観点もあるが、BMIの数値だけに注目が集まり、女性アスリートの過度なダイエットを防ごうという意味合いが強い。

体重やBMIの数値に惑わされず、どのようなカラダが健康なのか。この機に考えてみてはどうだろうか。

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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)

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(スポーツライター 酒井 政人)

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