伊藤園、全世界に通用する緑茶飲料製品に期待 欧州に本格進出 既存エリアは深耕 グローバル化推進への大きな布石
食品新聞 / 2024年4月12日 21時6分
伊藤園はこのほど、海外向けの飲料用原料を使用にした飲料製品(ドリンク)の海外現地生産体制を確立して新たにヨーロッパに本格進出するなど長期ビジョン「世界のティーカンパニー」の実現に向けグローバル化を一気に推し進める。
海外では現在、北米と中国を中心に世界40カ国でドリンクとリーフを販売。世界的な健康志向の高まりを追い風に販売量は拡大の一途を辿る一方、ドリンクの輸送コストのリスクが足枷になっている。
これにより2023年4月期の北米事業は利益を圧迫。北米では、アジア地域で生産された「お~いお茶」を輸入販売していることから、一昨年は海上輸送費の高騰に悩まされた。
今回確立された新体制は、この輸送コストのリスクを大幅に低減するもので、グローバル化推進への大きな布石と同社は位置付けている。
同時に、全世界で日本品質のドリンクを展開することが可能になる。
この新体制は、ヨーロッパ本格進出にあたり、残留農薬基準などEUの厳格な法規制や環境規制を突きつけられたことが誕生の契機になった。
伊藤園の中嶋和彦執行役員国際本部長取材に応じた中嶋和彦執行役員国際本部長は「世界一厳しいとされるEUの規制を乗り越えたことで、審査項目が各国で異なったとしても、中身においては全世界対応になり、どこにでも持っていけるようになった」と胸を張る。
ただし容器については、各国の言語や規制に準じて記載内容を変える必要がある。
ヨーロッパには満を持しての本格進出となる。同社はかねてから、人口や経済規模などの観点からヨーロッパ市場に着目していたものの、北米事業やアジアの基盤づくりと黒字化を最優先としていた。
その上、厳しい法規制も立ちはだかっていた。
伊藤園は4月1日、ヨーロッパの橋頭保としてドイツ・デュッセルドルフ市に子会社(ITO EN Europe GmbH)を設立する。
テザードキャップを導入した「お~いお茶」そのドイツで、7月からドリンクの包材に関する規制が強まる。キャップについては開栓後も胴体部と切り離せられない“テザードキャップ”の導入が必須となる。
冒頭の技術革新は、テザードキャップに対応していくための手段として編み出された。
「テザードキャップを国内で生産しようとすると割高になってしまい、アメリカなど他の諸外国で追随の動きがみられなかったことから、思い切って現地生産へと舵を切った。ドリンクの製造協力会社様を吟味させていただき、試行錯誤して新技術に辿り着いた」と振り返る。
各国で製造会社の協力が得られれば、この技術は水平展開が可能となり、伊藤園の海外事業は急加速していくことが予想される。
2027年4月期までの中期経営計画では、海外売上比率12%以上が掲げられている。現在、この計画を前倒しで達成の勢いであることから、大幅な上方修正も予想される。
アメリカの食卓に置かれる「お~いお茶」「いろいろなお茶があり、将来はそれらも扱っていくが、向こう5年くらいは『お~いお茶』をどれだけ世界に広められるかに挑んでいきたい。現在、世界の40の国と地域で展開しているが、これを100の国と地域に拡大していくのが1つの目標」と意欲をのぞかせる。
長期ビジョン「世界のティーカンパニー」の各ステージは以下の通りで、現在、第2ステージの準備が整った段階にあるという。
――第1ステージ:「お~いお茶」など国内既存事業の盤石化
――第2ステージ:「お~いお茶」のグローバルブランド化
――第3ステージ:世界各地の茶文化とつながり新たな茶市場を創造
「2001年の北米進出から20年近くで商品が全体的に整備でき、それに対応する組織も、国際本部だけではなく本社部門や生産部門などの体制も整ってきている。本当にこれから世界に広げていく段階に入ったと感じており、そのエポックメイキングがドイツ進出だと位置付けている」と語る。
市川團十郎白猿さんを起用しアニメと融合した「日本には世界一のお茶がある」篇商品は「MATCHA GREEN TEA」など「ITO EN」ブランドがある中で、「お~いお茶」に最注力していく。
「多他の飲料メーカーやお茶屋と大きく異なるのは、お茶でドリンク・リーフ・パウダーの3つ形態を展開しているのは当社だけであるので、この3つをしっかり各国に根づかせていく。今まで以上に『お~いお茶』にフォーカスしていく」という。
市場定着を図るため、今後はマーケティング活動の質を高める。
具体的には「現在、市川團十郎白猿さんを起用しアニメと融合した『日本には世界一のお茶がある』篇を全世界共通のグローバル広告として展開しており、現在、多言語化のテストを行っている。グローバル広告と並ぶもう1つの柱としてSNSを活用し、国ごとに適したマーケティングを展開していく」。
ベトナムの売場での販促の様子展開エリアは、米国と中国を二大市場と位置づけ、急成長を遂げている東南アジアで深耕余地を見込む。
「東南アジアについては現在、シンガポール、タイ、インドネシアに販売拠点があるが、シンガポールの子会社からは周辺諸国をカバーしている。さらなる成長に向けて、新たな拠点を設け空白地帯をどんどん埋めていきたい」と意欲をのぞかせる。
この考えの下、4月1日にはドイツの子会社と時を同じくして、ベトナム・ホーチミン市に子会社(ITO EN VIETNAM CO.,LTD)を設立する。
「ベトナムは東南アジアの中で一番高い伸び率で成長している。人口が1億人を超え、私見だが、ベトナムの方は味覚が繊細で、緑茶のおいしさも分かっていただけると思っている」と期待を寄せる。
異常気象や有事に備えて、BCP(事業継続計画)も強化していく。米国では、将来の高い成長を見込み自社工場の設立を視野に入れる。
「先行き不透明な中でサプライチェーンを切らさないように、いくつかの国と地域をまとめてブロックをつくり、各ブロックでサプライチェーンが完結するようにしていきたい」との考えを明らかにする。
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