〈能登半島地震から4カ月〉倒壊した家屋の前に並べられた猫の置物の理由、ガレキに供えられた花…家も職も失った酒屋店主は「最近1番うれしかったことは仮設住宅に入れたこと」
集英社オンライン / 2024年5月4日 8時0分
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今年の元日に発生した能登半島地震。筆者は発生直後すぐに取材で被災地をまわった。あれから約4ヶ月、地震で被害が大きかった地域のひとつでもある輪島市を再び訪れた。
GW明けには完成を目指したい
輪島市へ向かう大動脈「のと里山海道、能越道」は地震発生当時に比べて道路が整備され、震災直後は高岡市内から片道8時間以上かかったものが、わずか2時間で到着できた。
とはいえ、道路は一時的な補修しかしておらず、被害が大きかった地域では片側車線しか走行することしかできない箇所もある。「元に戻った」とはもちろん言えない。それでも震災当時、被災者が避難所として利用していた中学校から元気な生徒たちの声が聞こえると安堵する。
輪島市内で多く目にしたのは仮設住宅だ。仮設住宅の建築作業は急ピッチで進んでおり「道の駅輪島」や「輪島マリンタウン」敷地内には多くの作業員が出入りしていた。
「2月下旬頃から仮設住宅の設営が始まりましたが、完成するまで休みはありません。当然、疲労もたまっていますが。交代作業員もいません。ですが、一刻も早く仮設住宅を仕上げて被災者の皆さんに使ってほしい。ゴールデンウィーク明けには完成させたい」(取材に応じた建築作業員)
この作業員の唯一の楽しみは自衛隊が設置した野営風呂。被災者とともに週2、3回ほど入浴するのが日課だという。そんなマリンタウン周辺では上下水道が復旧していたが、いまだ輪島市内にも断水が続く地域もあるという。
輪島朝市付近の駐車場にはキャンピングカーが複数集まっていた。1月10日、一般社団法人日本RV協会が珠洲市にキャンピングカーを貸与したことが報じられ大きく話題となったが、輪島市にも複数台が貸し出され、駐車場は復旧支援者たちのベースとなっていた。
「これから暑くなり体調が心配です。車両によってはエンジンをかけなくてもヒーターを使用出来る車両もあるが、電気を付けっぱなしでバッテリーがあがる車両もある。電源を取れる仕組みになっていない車も多くあるので、市や県などから電力を供給してもらえると助かります」(一般社団法人日本RV協会 理事)
「時間が経つごとに貯金がどんどん減っていく…」
震災当時は火災で焼け野原になった「朝市通り」にも足を踏み入れた。このあたりは、地震発生当時と変わらず何ともいえない“匂い”がする。焼けて鉄骨が剥き出しになった建物は今も放置されているが、一部の瓦礫は撤去されていた。
さらに焼失した建物の前には「猫の置物」「湯呑み」「茶碗」などの陶器類がズラリと並べられていた。気になって、付近で撤去作業する地元住民に聞いてみると「震災後、警察や消防隊員の方が不明者を捜索しているときに割れていなかった陶器類を保護し、家の前に並べていったんだ」と話していた。
瓦礫と瓦礫の間には細い道が出来ていて、被災者が独自に作った“通路”が幾つもあった。スコップで撤去作業をしていた、朝市通りで酒屋を営んでいた橋本秀明さん(63)に話を聞いた。
「火災で270坪の敷地に建てた自宅兼店舗は全て失いました。3月3日に無事、仮設住宅に入ることができたことが最近一番よかったことかな。仮設には一応トイレもお風呂もある。ただ、当たり前ですけど電気、水道、食費も自腹です。
避難所におった場合は、お風呂はどっか入りに行ったりトイレはトイレの専用車があった。食べる物に関しても救援物資をいただけてたので。今はご覧のとおり店を失って無職、1円も稼げない。時間が経つごとに貯金がどんどん減っていく…」
右胸に「医師」「看護師」と書かれたベストを着た4人グループに出会った。4人は群馬県から輪島に医療支援に来た医師と看護師だという。
「被災地を生で見て言葉を失いました。今、医療現場は『緊急医療の必要な状態の次の段階』にきています。先ほども、介護施設などへ行って『床擦れ』の状態を診たり、避難者の健康チェックなどもしてきました。まだまだ医療従事者は必要です」
医師は今回の地震で「一番よくないのは風化することだと思う」と話していた。確かに能登の復旧はまったくといっていいほど追い付いていない。わずか4カ月前のことなのに、日々のニュースでかき消されるなか、被災地はこの日も多くの人が踏ん張っていた。
取材・文・撮影/幸多潤平
集英社オンラインニュース班
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