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ビットコイン、ETF承認でなぜ上がる?

トウシル / 2024年1月12日 16時38分

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ビットコイン、ETF承認でなぜ上がる?

ビットコイン、ETF承認でなぜ上がる?

2023年のビットコイン/円

TradingViewより楽天ウォレット作成

 ビットコイン相場が堅調だ。昨年1月1日に216万円でボトムアウトして、今年1月10 日には692 万円と3倍以上に上昇、2021年11月に付けた史上最高値785万円に100万円足らずにまで値を伸ばした。

 この上昇の背景にビットコインの現物ETF(上場投資信託)の承認がある。昨年6月に世界最大の運用会社ブラックロックが申請を出してから承認期待が高まり、ビットコイン相場の上昇をけん引してきた。本稿では、そもそもなぜETFが登場したらビットコインが買われるのか? そして今後どうなりそうなのか解説したい。

なぜETFでビットコインが買われる?

米機関投資家の参入

 金融機関などの仲介者なしに、インターネット上で流通する新たな電子マネーとして登場したビットコインは、一部の愛好家の間でトレーディングカード感覚で取引が始まった経緯もあり、個人中心の市場だった。そしてこの市場に、法人、特に機関投資家の資金が流入すると大化けする、と指摘されていた。

2020年コロナショック以降のビットコイン/円

TradingViewより楽天ウォレット作成

 そうした動きが2020年に始まった。コロナショックによる史上最大の財政支出と、金融緩和によるインフレリスクを感じ取った一部の米機関投資家が、ヘッジとしてビットコインを買い始め、2021年のブームを演出した。

 しかし、その当時、ビットコイン市場に参入したのは、ポール・チューダーなどのヘッジファンドやロスチャイルドなどファミリービジネス、ハーバード大などのアイビーリーグ、そして事業法人でいえばテスラなど小回りの利く投資家が中心だった。

投資家のすそ野拡大期待

 保険会社や年金、投資信託など、伝統的な機関投資家にとって、ビットコインのエクスポージャー(リスクにさらされている割合や総額)を取ることは、まだまだハードルが高かった。

 しかしブラックロックのような信用力がある企業が運営するETFが登場すれば、ハードルが一気に下がり、そうした金融機関の資金が流入すると期待して、投機筋が先回りしてビットコインを購入しているわけだ。

金価格と米ベースマネー

Bloombergより楽天ウォレット作成

金ETFの前例

 そんなにうまくいくのか、疑問に思われるかもしれないが、実はこれには前例がある。ビットコインと同様、金も保管に問題があるアセットクラスだった。現物を保管・運搬するにはコストがかかり、機関投資家が購入するのには不向きだった。

 しかし2004年に、初めて米国に金ETFが誕生、そこから7年間で金価格は4倍以上に上昇した。機関投資家が株と同じ感覚でポートフォリオの一部に組み込むことが可能になったからだ。これと同じことがビットコインについても期待されており、その期待感でここまでビットコイン価格は上昇してきた。

ビットコインETF登場後はどうなるか?

 以上はここまでビットコインが上昇してきた理由だが、はたしてETFが承認された後のビットコイン相場はどういった動きが予想されるだろうか? 本当に保険や年金といった伝統的な投資家がビットコインのETFを購入する可能性があるのだろうか? そもそも米国の投資家はなぜビットコインを購入したのだろうか?

ローンチ直後は利益確定売り

 まず、従来のパターンでいうと、ETFが承認され、実際にローンチされると、ビットコイン価格はいったん下がる可能性が高い。

 いわゆるBuy on the rumor, Sell on the fact(うわさの段階で買って、事実が出たら売れ)という現象で 、逆説的だが承認されれば、ETFが承認されるかもしれないという最大の買い材料がなくなるし、期待先行で買っていた投機筋の利食い売りが殺到する。

 それを押し返すほどの機関投資家の買いが集まれば別だが、プロの投資家はそうした加熱した相場は静観しがちだ。実際、金ETFが誕生した際も、ビットコインの先物ベースのETFが誕生した際も、ローンチ直後は利食い売りがみられた。言い換えれば、ETFの誕生はビットコインを買いやすくするが、ビットコインを買う理由そのものではないということだ。

米投資家がビットコインを買った理由

 では2020年から2021年にかけて米国の投資家たちがビットコインを買った理由とは何だったのか? それは先ほども述べたようにコロナ対策によるインフレリスクヘッジだった。当時、コロナ対策と称して各国では中央銀行がお札を刷って国民に配っていた。

 当時は応急措置として必要だったのかもしれないが、通貨価値の下落を招きかねない危険なオペレーションだ。それに気づいた伝説の投資家たちはドルから資産の一部をビットコインに移した。

 かくして米国では2023年にかけて一時9%を超えるインフレが到来、FRB(米連邦準備制度理事会は異例のペースでの利上げを余儀なくされたが、ビットコイン投資家たちが備えたのはこの程度のインフレではなく、通貨価値への信用が毀損(きそん)し、インフレがインフレを呼ぶようないわゆるハイパーインフレに近い状態だ。

 逆に言えば、FRBはそうした過度なインフレが到来する瀬戸際でうまく立ち回ったといえるのかもしれない。

 この点、日本では、政治への不満が高い割に、政府への信用は驚くほど高い。すなわち、日本円の価値が毀損することなどあり得ないと信じ切っている向きが多い。長らく続いたデフレは、日本人の日本円への信用の裏返しともいえる。

 しかし日本政府には、ハイパーインフレで、事実上、国の借金を帳消しにした前科がある。戦後、新円切り替えと称して事実上の預金封鎖をし、その間に約100倍のインフレを起こした。

 この二つが同時に起こったことは偶然かもしれないが、事実上、国の借金は100分の1になり、戦前の富裕層の預金は100分の1になって返ってきた。あの巨額の戦費と借金を預金者が負担した格好だ。

インフレヘッジの意味

 これに対し、米国や欧州の投資家たちは、中南米や旧ユーゴ出身で自国通貨の価値が暴落して一夜にして資産が紙切れになった同僚などを目にしているせいか、割と法定通貨のリスクについて身近に感じているのかもしれない。

 こうした状況とリスクについて、伝説の投資家ポール・チューダー氏は「グレートマネタリーインフレーション」と表現、ブラックロックのラリー・フィンクCEOは「国家の厄介な問題」に対しビットコインがヘッジになると表現している。

 すなわち、米投資家たちは資産の多くをドルなどの法定通貨で運用しているが、その法定通貨の価値が下がりかねないと考えて、資産の数パーセントをヘッジとしてビットコインに振り向けているわけだ。そして、こうした動きはさらに拡大しかねないと考える。

日米ベースマネー

Bloombergより楽天ウォレット作成

水は低きに流れる

 というのは、コロナの経験で各国政府と中央銀行のタガが外れた印象があるからだ。上は日米の通貨発行量、ベースマネー(中銀当座預金残高+紙幣発行残高)の推移だ。ここ15年で円の発行量は約7倍に膨れ上がっているが、米ドルも15年間で約6倍に膨れ上がっている。特に米ドルのコロナ後の拡張は顕著で、今のところ元に戻る気配はない。

 コロナの際は、非常時だからと財源なく財政支出と金融緩和を行ったのだが、緊急対応ならばコロナが去って経済が通常時に戻ったら増税で借金を返し、通貨発行量も元へ戻すことが前提だったはずだ。

 ただ実際にやってみると、当初は将来返すつもりだったのかもしれないが、その時にはその時の生活があり、経済にブレーキをかけて元の正常な状況に戻すことはほぼ不可能になっている。実際に、日本政府は税収増を国民に還元する方針で、これでは国の借金もインフレリスクも増える一方だ。

 民主制下では最終決定権者である国民自身が困るようなハイパーインフレは起こらないと豪語する専門家もいるが、人々が目先の利益に目がくらんで賢明とは思えない選択をする姿を目にすることも多い。先進国でハイパーインフレに近いような事態が生じる可能性は低いかもしれないが、そのリスクはゼロではなく、昨今はむしろ増えていると考える。

 そうした中、米国経済が堅調で引き締め局面にある間はさほど問題とならないが、次の景気後退が到来し、財政支出や通貨発行量が増え始めると、徐々にそうしたリスクをヘッジしようとする投資家が拡大するのではないかと考える。

ETF誕生が効いてくるタイミング

 そうした際にこそETFの誕生が効いてくると考える。実際、金ETFの登場後、金価格が本格的に上昇したのはリーマンショック後の量的緩和による通貨発行増以降だ。次のショック時にはデジタルゴールドといわれるビットコインに資金が集まると考える。

 一部では、ETFが承認されればいくら新規資金が流入するか、といった皮算用的な見通しが出回っている。ブルームバーグのアナリストは150億ドル程度と予想、スタンダードチャータード銀行は1年で500~1,000億ドルと予想していると報じられた。

 ただ、筆者はETF承認を受けて自動的にそうした買いが入るわけではないという立場で、こうした議論にはあまり意味はないと考えている。

 ビットコインETFの登場は、それだけでビットコインの上昇をもたらすわけではなく、むしろ承認直後は期待先行で買われた分の利食い売りに晒されそうだが、次のショックと金融緩和時にはビットコイン投資家のすそ野を広げ、さらなる上昇をもたらすものと考える。詳しくは別稿に譲るが、2025年半ばに2,000万円近くに上昇すると予想している。

(松田 康生)

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