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自信満々に断言されると嘘でも信じてしまう理由 生成AIの「もっともらしい」誤回答にも要注意

東洋経済オンライン / 2024年5月10日 17時0分

「もっともらしい」言い方に騙されないためにはどうすればよいのでしょうか(写真:Graphs/PIXTA)

私たちの記憶は非常に曖昧で、頼りないものです。自分の記憶とは違う内容でも、誰かに自信満々に言い切られてしまうとなんだかそんな気がしてきて、いつの間にか記憶がすり替えられてしまうことがあります。その具体例について、慶応義塾大学環境情報学部の今井むつみ教授が解説します。

※本稿は今井氏の新著『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』から一部抜粋・再構成したものです。

曖昧な記憶はトラブルのもと

「記憶は非常に頼りないものだ」ということを知っていると、役に立つことがあります。なぜなら、相手の言うことがあやふやでも、ときに間違っていても仕方ないと許すことができますし、それでイライラすることも減るからです。

また自分の記憶に頼らず、様々なことをダブルチェックするようになりますから、ミスも減ります。自分が間違っていたかもしれないと、素直に非を認めて歩み寄ることもできます。

とはいえ、いいことばかりではありません。私自身、そのために痛い目にあったことがありました。

数年前、駐車場にバックで車を入れていたときのことです。横並びの駐車スペースに止まっていた車から女性が飛び出してきて、

「あんた、ぶつけた!」

と怒鳴ってきたのです。

私にはぶつけた感覚はまったくなかったのですが、相手は「ぶつけた」と言い張り、「ほら!」と言って、自分の車を指さします。

ぶつけた記憶はありませんでしたが、相手の指さした先にはうっすらと傷があり、「相手がそこまで言うのなら、ぶつけてしまったのかも……」と思いました。

相手のことを信じたというより、自分の「ぶつけていない」という記憶に、あまり確信が持てなかったのです。記憶の曖昧さに関しては、誰よりも知っているからです。

この世は「言い切った者勝ち」なのか

警察にも連絡しましたが、その対応は「保険屋さんで解決してください」というものでしたから、こうした事故は頻繁に起こっているのでしょう。

さて、私がつけたという傷を見ると、ちょっと塗装がはげて白い線が入っているくらいのものでした。それで、「数万円で済みそうだし、争うよりも保険で払ってしまおう」と引き下がりました。

後日、請求書が届きました。

そこに書かれていたのは、数十万円という金額でした。さすがにおかしいと思い、保険会社に確認すると、私が「ありとあらゆるところ」をぶつけたことになっていました。女性は、自分の車についた傷のすべてを、私の保険で修理しようとしたのです。

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