機内でタバコを「喫わない人お断り」!? 驚愕コンセプトの航空会社なぜ消えた? 初就航地が“日本”だったワケ
乗りものニュース / 2024年4月30日 16時12分
いまや「旅客機の機内は禁煙」はスタンダード。しかしJAL、ANA、世界の航空会社が禁煙化するなか、あえて「嫌煙家お断り」の方針を打ち出す「喫煙者専用航空」が計画されていました。
まさかの日本線が初路線予定…なぜ?
「旅客機の機内ではたばこを吸ってはいけない」――。いまやグローバルスタンダードとなっているルールです。しかしちょうど「全面禁煙化」が世界的なルールになりつつあった21世紀初頭、実は海外で「嫌煙家お断り」の航空会社が設立されようとしていました。
JAL(日本航空)、ANA(全日空)ではかつて機内での喫煙は許容されていましたが、1999年に機内の全面禁煙化を実現。21世紀に入ると世界中の航空会社の大半でも、全面禁煙が常識となっていました。
そのようななか誕生した航空会社が、イギリスのロンドンに本社を置く「Smoker's International Airways(スモーカーズ国際航空)」略して「スミントエアー(SMINTAIR)」です。発起人となったのは、ドイツの実業家アレクサンダー・ショップマンで、もちろんこの人もヘビースモーカーです。
そして「スミントエアー」が最初の就航地として選んだのは、日本。2007年、同社最初の路線としてデュッセルドルフ(ドイツ)~成田線を開設する計画でした。
最初の就航地に日本が選ばれたのは、当時の日本の喫煙率の高さも一因とされています。厚生労働省によると、2006年当時の男性喫煙率は約40%。30歳から39歳の場合は、53%にも上ります。
また、欧州から日本の直行便となると、長距離フライトとなり、機内の喫煙ニーズが高まることも要因のひとつともされていました。たとえば過去に同区間で直行便を飛ばしていたANA便の場合、そのフライト時間は成田発が12時間、デュッセルドルフ発が11時間半だったと記録されています。
そして、この「嫌煙家お断り」の航空会社は、このコンセプト以外にもユニークな特徴を備えていました。
「タバコ吸える」だけじゃない! スミントエアーのウリとは
「スミントエアー」の機内はその航空会社名が示すとおり「全席喫煙OK」です。この会社では2機の「ジャンボ機」ことボーイング747-400が導入される予定でした。
通常747-400の国際線仕様機であれば300席から400席の仕様が一般的ですが、ニューヨークタイムズや現地メディアによると「スミントエアー」の場合、座席設定数はわずか138とされていました。
この機にはいわゆるエコノミークラスはなく、ファーストクラスが30席とビジネスクラスが108席の2クラス構成。2階席にはシートベルト付きの椅子を備えたカウンターのほか、免税価格でタバコ類も買えるラウンジも機内に設置する計画とされていました。もちろんこのリッチなサービスゆえに運賃も高額で、60万円から120万円ほどというのが同社の計画の概要です。
同社では就航に向け、パイロットやCA(客室乗務員)も募集されましたが、求人には「嫌煙家お断り」と記載されるほどの徹底ぶりがうかがえます。CAの制服についても、2年おきに変えていく方針を宣言するなど、サービス面でのこだわりも明らかにしていました。
しかしスミントエアーは、デュッセルドルフ国際空港の着陸枠の承認も受け、当時発着枠がいっぱいとなっていた成田空港ではなく中部空港の飛行許可を実際に獲得したものの、最終的には実現に至りませんでした。
これは運航を開始するための資金が調達できなかったためで、その後ショップマン氏は2007年、飛行許可の権利を取り消しています。
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