医者が脳梗塞で失語症に…どんなリハビリで回復できるのか?【正解のリハビリ、最善の介護】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月8日 9時26分
50代の男性医師、Cさんのお話です。
ある朝、起床してから、母親に贈るための“母の日カード”にメッセージを書こうとしました。しかし、「母の日おめでとうございます」と書くつもりが、文字がまったく浮かんできません。「母」の単語が出てこないのです。さらに、ろれつが回りません。ただ、手足は動いたので、妻に手ぶりで言葉が出ないことを知らせ、大学病院の救急センターに連れて行ってほしいと伝えました。
救急センターでは、麻痺はなく歩くことはできましたが、話すことができません。緊急MRI検査が行われ、「急性期脳梗塞」と診断されてSCU(脳卒中集中治療室)に入院となりました。
脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶える病気です。幸い、Cさんの急性期治療は、カテーテルを使って血栓を取り除く脳血管内手術という侵襲的な治療は必要なく、血栓を溶かす薬の点滴と内服治療だけで治療ができるという方針になりました。
Cさんは点滴と内服の治療を受け、その日の夕方5時には「あ、い、う、え、お」が言えるようになりました。ただ、他の文字はまだ浮かびません。そこで、Cさんは眠りにつくまで徹底的に「あ、い、う、え、お」を繰り返し学習しました。
この状態は、左前頭葉の脳梗塞による言葉がつくれない失語症という症状です。障害名は「失語症と高次脳機能障害」となります。失語症には、言葉を発する運動性言語機能と、言葉の意味を理解する感覚性言語機能があり、Cさんは運動性言語機能が主に障害され、感覚性言語機能も軽度に障害されていました。ただ、幸いなことに麻痺はなかったので、自分で動くことができました。これにより、トイレなどの身の回りのことは自分でできるので、自分の尊厳を保つことができました。
Cさんのように医師が脳梗塞になった時、何ができるでしょうか。まずは急いで脳卒中救急センターに行き、専門医の診察と治療を受けることです。そこで急性期治療を受け、その方針を理解することが重要です。治療方針は、専門医に任せるしかありません。
もうひとつ大切なのは、障害の治療を受けることです。こちらは、障害の診断を受けてから、医師とリハビリ療法士による障害を改善する訓練に取り組むことになります。どれくらいやる気を持ってリハビリするか、もしくはしないかは、患者自身の決定になりますが、それで回復の運命は決まってしまいます。つまり、基本は自分が頑張るしかないのです。
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