民法上は相続財産ではないが…「死亡保険金」が“相続税の課税対象”となる理由【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月9日 8時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
相続税はいわば民法と税法の“二刀流”。相続税を理解するには、民法第5編の相続に関する規定と、相続税法の両方の知識を身につけなければなりません。「民法上の相続財産」と「相続税がかかる財産」は異なります。民法上は相続財産ではないのに課税対象となる財産がある一方で、相続税や贈与税がかからない財産も…。稲垣啓氏の著書『イラストでサクッとわかる 日本一たのしい税金の授業』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、見ていきましょう。
※本稿では、次の略称を用いています。
相法=相続税法、相基通=相続税基本通達
民法にはない「みなし相続財産」と非課税限度額
相続税法上、課税財産を構成するものは本来の相続財産(民法上の財産)の他に、課税の公平を図るために相続財産であるとみなして課税する「みなし相続財産」が含まれます。みなし相続財産の主なものとしては、生命保険金(相法3①一)、退職手当金(相法3①二)があります。
例えば、生命保険金。保険金受取人の固有財産であり、被相続人から直接継承するものではないので、民法上の本来の相続財産ではありません。しかし、被相続人による保険料振込みにより、保険金の取得という経済的便益を受けていることに着目し、みなし相続財産とされます。
図表1中の(第〇表)は、相続税の申告に係る計算書や明細書の番号であり、第1表から第15表まであります。ちなみに、相続税の申告書は第1表だけです。
他方で、生命保険契約は、被相続人が自分の死後における家族等の生活保障を意図して加入していますので、一定額について課税しない、つまり非課税限度額が設けられています(相法12①五他)。
相続税がかからない財産とは?
遺贈者を含む、被相続人から直接承継した金銭的な価値があるものはもちろん、被相続人から直接承継したものではなくても、生命保険金や退職手当金などは、その経済的価値に着目して相続税の課税財産となります(みなし相続財産。内容は前項のとおり)。
しかし、その財産の性格を考えた場合、国民感情や公共性、社会政策的な見地から課税することが好ましくないものもあり、相続税法は非課税財産として次の6種類を規定しています。なお、各財産の下に、非課税とされる理由を付記しています。
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①皇嗣(こうし)が受けた物(相法12①一):憲法上の特殊な地位に随伴するもので、自由に処分ができないから
②墓所、霊びょう、祭壇(相法12①二):日常礼拝の対象となっており、国民感情の面からも課税対象とするのは不適当だから
③宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業の用に供する財産(相法12①三):民間共益事業の特殊性から、その事業の保護育成を図るものであるため
④条例による心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権(相法12①四):共済制度が心身障害者を扶養するためのものであるため
⑤相続税が課税される保険金(相法12①五):生命保険制度を通じての貯蓄の増進と相続人の生活の安定のため
⑥相続税が課税される退職手当金等(相法12①六):相続人の生活の安定のため
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なお、⑤⑥について詳細は前項もご参照ください。
相続税の受け皿となる「贈与税」にも、非課税財産がある
贈与税でも同様に、相続税法で非課税とする財産があります。
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①法人からの贈与(相法21の3①一):相続税を補完する必要がないため
②扶養義務者相互間の生活費や教育費(相法21の3①二):日常生活最低限の費用であるため
③宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業の用に供する財産(相法21の3①三):民間共益事業の特殊性から、その事業の保護育成を図るものであるため
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他にも相続税法で非課税とする財産がありますが、それらに加えて香典、祝物等で社交上必要と認められ(相基通21の3-9)、実務面から非課税とされるものもあります。
稲垣 啓
中小企業診断士、税理士
1977年富山県生まれ。立命館大学経営学部を中退(飛び級)し、同大学院法学研究科修了(民事法)。2011年9月に中小企業診断士、2020年3月に税理士登録。著書に『原価計算なるほど用語図鑑』(単著、中央経済社)、『行政書士・社労士・中小企業診断士 副業開業カタログ』(共著、中央経済社)などがある。
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