原作改変が「黒歴史」に? 謎のアニオリ展開に賛否両論・3作
マグミクス / 2024年4月8日 17時10分
■少年マンガらしからぬオリジナル要素に作者もコメント
マンガを原作とするTVアニメには、さまざまな事情からアニメオリジナルの展開や演出、いわゆる「アニオリ」が加わることがあります。なかには、視聴者だけでなく、原作者や制作者がコメントをするなど、物議を醸す展開となったものもあります。原作改変についての反響が大きかったアニメ作品を見ていきます。
※この記事には『ぼくらの』『エルフェンリート』最終回についての記載があります。
●『鋼の錬金術師』
『鋼の錬金術師』(原作:荒川弘)は2001年に月刊「少年ガンガン」にて連載が開始された、ダークファンタジーの金字塔といわれる名作マンガです。錬金術を使ったアクションや、魅力的なキャラクターが織りなすさまざまな人間模様が人気を博し、2003年にTVアニメ化されています。当時は原作の連載と並行していたこともあり、アニメ放送では、たびたびオリジナル要素が追加されました。
アニオリ自体は好評なエピソードが多いものの、ファンの間で「黒歴史」として語り継がれているのは、原作やアニメともに1話から登場した「ロゼ」の身に起こった悲劇のエピソードです。
ロゼは、主人公である錬金術師「エドワード・エルリック」と弟の「アルフォンス・エルリック」によりインチキ宗教の「レト教」から救われた、リオールという地に住む女性です。原作では、レト教の悪事が暴かれた後に、エルリック兄弟がリオールを去るシーンでロゼは出番を終えます。
しかしアニメ14話のオリジナルシーンで、暴動により壊滅寸前のリオールが描かれた際にロゼが再登場し、街の子供を守るため、兵士に抵抗する果敢な姿を見せました。
ところが次のオリジナルストーリーで登場した40話では、言葉を発せない状態で、父親が不明の赤ん坊を抱えるロゼの姿が描かれます。そのとき、「スカー」の発言により彼女はリオールで軍に連行され、暴行を受けていたことが明かされたのです。ロゼの現状から彼女の身に何が起こったかを察した視聴者が、強いショックを受ける展開となりました。
これについては荒川弘先生も、「アニメディア」のインタビューで「私が目指す少年マンガにおける娯楽の範囲から逸脱していた」などと語っています。ネット上では、「鬼畜な展開すぎて受け入れられない」という声や「『ハガレン』のダークな世界観に合っていて個人的には嫌いじゃない」という声など、賛否両論といえる反応がありました。
●『ぼくらの』
2003年の「月刊IKKI」にて連載開始された『ぼくらの』(原作:鬼頭莫宏)は、少年少女15人が一度操縦すれば必ず死ぬという巨大ロボット「ジアース」に乗り、地球を守るため命を懸けて戦う物語です。子供たちが次々と命を落とす過酷な展開で「鬱マンガ」としても名を連ねる作品です。2007年にアニメ放送された際には、原作との大幅な改変が見られたことでファンの間で騒ぎが起こりました。
物語の展開に重要性がないアニオリキャラがしゃべり続けるエピソードが追加されたり、原作では最終話で少年少女が全滅するところ、アニメではひとり生き残る設定になっていたりなど、改変された箇所は多岐にわたります。
制作を担当した森田宏幸監督は、原作が嫌いで改変したことを自身のブログで明かしていましたが、後に謝罪しています。また、死にゆく運命から子供たちを救いたかった旨も説明していました。
未来を担う少年少女の救いのない展開には、心を痛める人も多いでしょう。しかし、原作ファンにはそれもひとつの結末として受け入れられていることでもあり、「結末を変えるにしても別アニメを観てるようだった」「原作どおりにリメイクしてくれないかな」などのコメントが相次ぎました。
■アニメの結末は罪の重さに見合わない?
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●『エルフェンリート』
2002年から「週刊ヤングジャンプ」で連載された『エルフェンリート』(原作:岡本倫)は、国立生態科学研究所を脱走した人間を殺りくするDNAをもつ新人類「ディクロニウス」の「ルーシー」と、被験体の彼女を追う研究所や、その関係者をめぐる物語です。事故で記憶を失ったルーシーは別人格の「にゅう」として、偶然出会った少年「コウタ」と同居し、やがて恋愛感情を抱くようになります。残忍な「ルーシー」と無邪気な「にゅう」の二重人格ゆえの苦悩や、最終話で迎える悲恋の結末が話題となりました。
2004年に放送されたアニメでは、悲劇のラストが大きく異なります。まず原作では、自身の暴走からコウタを守るため力を使い果たしたルーシーは、ディクロニウスの特性から身体が溶け、苦しみながら死んでいきます。アニメでは、コウタに別れを告げてその場を去ったのち、ルーシーを追う武装集団に銃で撃たれる描写がありましたが、明らかな死亡シーンは描かれていません。
また原作でコウタには、ルーシーにより父親と妹を惨殺された過去がありました。ショックで失っていた記憶を取り戻したコウタは、共同生活をしていた彼女に対し、家族同様の情がありながらも憎しみをあらわにしていました。しかしアニメでは、コウタは「君だってさ、たくさん悲しい思いしてきたんじゃないのか」と彼女を思いやる言葉をかけています。
アニメではルーシーに救いがあったものの、彼女自身、多くの人間を殺しているため「罪の重さを考えると原作のほうが説得力ある」「アニメは結末が甘い」などという声があがりました。
また、原作者の岡本倫先生は自身のX(旧:Twitter)で、脚本について「説明が足りなくてストーリーが分からないんじゃないか」と監督に伝えたものの、「感じてもらえばいい」と言われ、監督に任せたことを明かしています。
(LUIS FIELD)
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