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名大など、水素原子の約1/20の超高精度で収差補正できるX線顕微鏡を開発

マイナビニュース / 2024年5月9日 16時32分

画像提供:マイナビニュース

名古屋大学(名大)、理化学研究所(理研)、大阪大学(阪大)、高輝度光科学研究センター(JASRI)、ジェイテックコーポレーションの5者は5月8日、従来の性能限界を超え、水素原子の約1/20という超高精度で収差補正でき、なおかつ安定性も有するX線顕微鏡用の形状可変ミラー型対物レンズを開発したことを共同で発表した。

同成果は、名大大学院 工学研究科の松山智至教授(阪大大学院 工学研究科 招へい准教授兼任)、同・井上陽登助教、理研 放射光科学研究センターの矢橋牧名グループディレクター、同・香村芳樹チームリーダー、ジェイテックコーポレーションの中森紘基研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、光学とフォトニクスに関する全般を扱う学術誌「Optica」に掲載された。

放射線の一種であるX線は、1pmから10nmという原始レベルの極めて短い波長を持つ電磁波(光)。X線を使った健康診断のレントゲン撮影で知られているように、透過力が高いことから、物質を破壊することなくその内部を調べることが可能だ。そのX線をミクロの世界の観察に利用したX線顕微鏡であれば、非破壊的かつ、原理的には可視光顕微鏡よりも高い分解能で、しかも電子顕微鏡では扱えない厚い資料ですら内部構造を観察できるポテンシャルを秘めている。

しかし、顕微鏡の対物レンズに求められる作製精度は光の波長程度であるため、X線の場合に要求されるのは原子レベルとなる。これは、X線用対物レンズの作製そのものが原理的に不可能といえ、現状では実現できる空間分解能が制限され、X線顕微鏡本来の性能を発揮できていないとのこと。そこで研究チームは今回、その課題を解決するため、形状を自由に変形できる鏡(形状可変ミラー)を用いたまったく新しいX線反射型対物レンズを提案し、そして実際に開発することにしたという。

形状可変ミラーを用いたX線反射レンズの場合、作製の際に生じた誤差を顕微鏡観察中に検出し、その場で補正することができれば、原理的にはX線用顕微鏡が抱える課題を解決することが可能。問題は、既存の形状可変ミラーでは、精度や安定性が不足しており、X線顕微鏡には適用できないという点だという。

その精度と安定性が不足する根本原因として、「光の反射」を担うミラー基板に「変形の駆動源」(たとえば圧電素子)を組みあわせたことにあると研究チームは考察。異種材料を接合した複雑な構造では、変形特性や安定性に問題が生じるほか、変形の駆動源としてよく用いられる材料の圧電セラミックスなどは、多結晶粒子を焼結して作製された複雑な構造を持つため、安定性や線形性に課題があり、顕微鏡への適用に問題があったとする。

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