広がる波紋、仏「ウクライナ派兵を排除せず」の思惑 ロシアによる侵攻から2年、マクロン大統領が言及
東洋経済オンライン / 2024年3月7日 9時30分
フランスのマクロン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻から2年が経つ2月26日、パリで開催されたウクライナへの支援について話し合う会議で、地上軍をウクライナに派遣する可能性について、「合意は得られていない」としながら、「(派遣の可能性を)何も排除しない」と発言した。
この会議には、ドイツのショルツ首相、イギリスのキャメロン外相など20カ国の首脳・閣僚が参加していた。ロシアに先頭切って制裁を加える西側諸国として地上軍派遣への言及は初めてだった。
ドイツやアメリカは派兵を否定
一方、ショルツ首相は欧州諸国やNATO諸国からウクライナに「兵士は派遣されない」と断言した。スペインやイタリアなども会議の翌日に地上軍派遣から距離を置くことを確認している。アメリカも地上軍の派遣を否定。欧州連合(EU)を離脱した対ロシアの急先鋒でもあるイギリスは医療面の支援のため、ウクライナに少数の専門家を駐留させていることを認めたうえで、「大規模な派兵は計画していない」と断言した。
その後ドイツでは、ドイツ空軍のトップらが長距離巡航ミサイル「タウルス」のウクライナへの供与について協議する音声が漏洩した疑惑が浮上したが、3月4日にショルツ首相は「ロシア領土にまで飛んでいくミサイル供与は、私が首相のうちはありえない」と否定した。
西側諸国のあまりにも早い反応の背景には、核攻撃も辞さない脅迫発言を繰り返すプーチン露大統領を過度に刺激したくない思いが現れていた。
そこで浮上する疑問は、果たして支援会議の席上で地上軍派遣が議題になったのかということだが、参加者のオランダのルッテ首相とスウェーデンのクリスターソン首相は、この問題は議題ではなかったと語った。
マクロン氏の発言を歓迎したのは当然ながら、ウクライナ大統領府だったが、今、フランス国内で起きている論争について、セジュルネ外相は「ウクライナにおける西側軍の駐留が“交戦の敷居”を超えることはない」とマクロン発言を和らげた。ウクライナへの派兵が実際の戦争への参戦を前提したものではなく、あくまで支援する軍備品をウクライナ人が使用する支援を維持するためと受け止める専門家も多い。
フランス国内では、左派と極右がマクロン氏の発言を批判している。特に左派を率いる不服従のフランス党を率いるメランション氏は、フランスを戦争に巻き込むとんでもない発言と批判している。
マクロン氏は3月4日、「われわれは議論を開始し、ウクライナを支援するためにできることすべてを考えている」「私はつねに私たちの枠組みについて明確にしているし、われわれはロシア国民と戦争状態にあるわけではなく、エスカレーションの論理に入ることを拒否する」と述べ、現時点での地上軍派遣の計画はないことを強調したが、強弁を変えていない。
派兵された場合の軍の役割とは?
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