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日本人が「長期で老後の資産形成」を狙うなら何を買うべきか…投資のプロが「これをパクればOK」という買い方

プレジデントオンライン / 2024年5月10日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

老後の資産形成を図るには、どんな投資をすればいいのか。ジャーナリストの後藤達也さんの著書『教養としての日本経済 新時代のお金のルール』(徳間書店)より、インベストメントLab代表の宇根尚秀さんとの対談をお届けしよう――。

■「どうして儲かるのか」が理解できる投資手法

【後藤】新NISAが始まって、今までよりも投資が広がる気配がしています。普通の人には宇根さんのように会社を一つ一つ吟味して、分散して投資することは難しいですし、そもそもそこまで時間もかけられないと思います。投資を手軽に始めるならどういう風にすればいいのでしょうか。

【宇根】「長期・グローバル・分散・パッシブ・積立投資」から始めるのがいいと思います。投資にはいろんな手法があります。その中でこの投資手法は勝率が非常に高い投資手法だと思っています。

投資手法の判断の良し悪しは、その投資手法を採用した時のトラックレコードと、収益の源泉の理解、すなわち「それがどうして儲かるのか、収益の源泉は何なのか」ということが理解できるか、の2つで判断できます。その両方においてこの手法は非常に好成績です。

■世界経済の成長を予測するなら「全部買い」がオススメ

もちろん、必ず儲かるとも言えないのですが、少なくとも過去50年間の期間でどの20年間を選んでも儲からなかった時がなかった、という事実があります。また「長期・グローバル・分散・パッシブ・積立投資」は、世界中の金融商品の大多数を全部買いしてしまおう、という手法です。

金融商品(株式や債券)を買う、という行為は、当該企業の業績や国の税収に依拠した収益の分配権を得るということなんですが、その「金融商品を全部買いする」、というのはすなわち世界経済全体の成長にベットしていることに他なりません。

投資家としては、人口増加と技術革新の足し算として考えられる世界経済の成長が、今まで起きたのと同様に今後も起きていくであろう、という考え方が腹落ちするか否か、ということになります。短期的には世界経済は浮き沈みしますが、長期的には成長していくだろうと信じられそうであれば、「長期・グローバル・分散・パッシブ・積立投資」は正当化されるのではないでしょうか。

■20代に投資した1万円は定年後には何倍にもなって返ってくる

【後藤】長期というのは、20~30年のスパンなんでしょうか。

後藤達也さん
後藤達也さん

【宇根】そうですね。そもそも投資の目的を考えた時に、短期的に自分の資産を10倍にしたいというニーズも確かにあると思うのですが、大多数の人が考えるべきは、老後のための資産形成なんですよね。それを成功させるという主題で考えた時には、20~30年のスパンで成功できるグローバル分散投資に積立をしていけば、世界経済の成長の果実を享受する形で投資が成功していく可能性が高いんじゃないかなと思います。

【後藤】たとえば20代でそんなに投資に拠出できるお金がない人もいると思うのですが、月1万円でも20代の頃から始めていった方がいいということですか。

【宇根】はい。20代に投資した1万円は、65歳を超える頃には何倍にもなって返ってくることが見込まれます。20代の時には1万円ずつでも構いませんが、30代になって余裕が出てきたら2万円、3万円と少し増やして積み上げていけば、65歳になった時にも生活が豊かになるんじゃないかと思います。

1万円紙幣
写真=iStock.com/minianne
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/minianne

■今の投資信託は「投資家にとっては素晴らしい」

【後藤】最近はつみたてNISAもあり、積立を利用する人も増えてきたと思うんですよね。積立は基本的に長期の発想だと思うので、長期投資も広がってきている気がするんですが、分散も初心者からすると難しい気がするんです。何をどう分散すればいいのか、簡単にできる方法はありますか。

【宇根】分散投資にあたっては、投資信託を使っていただくとよいと思います。投資信託はかつては個人の投資家の前に提供される金融商品としては、業者都合の設計が多く、手数料が高すぎたり長期積立投資にそぐわない、優良とは言えない商品が多かったのですが、昨今は隔世の感があります。手数料が非常に安い良心的なパッシブファンドが増えてきて、投資家にとっては素晴らしい状況になっています。業者にとっては儲からない、という課題が出てくるのですが。

【後藤】運用業者の利益が減った分、その恩恵を投資家が受けているんですね。

■昔の投資信託は手数料もリスクも高かった

【宇根】本来あるべき姿になってきたということで、利益が減った中でも立っていられるように運用業者自体も変革していかなければならないですね。

たとえば10年前に銀行・証券会社が薦めていた投資信託や、ネット証券のサイトに出ていた「投信人気ランキング」といったものでは、毎月分配型、ブラジルレアル等の高金利通貨建て、といった手数料が高かったり、リスクが高く、投資を行うことによるリスクとリターンのバランスが悪い商品が上位に上がっていました。毎月分配型といった積立と違い複利効果がなく、大半の資産形成の年代層にとって投資の基本である効果が得られないものも数多く見られました。

宇根尚秀さん
宇根尚秀さん

【後藤】手数料が高いものも多かったと記憶しています。たとえば信託報酬が1%だとしたら、100万円分の投資信託を買った場合、毎年1万円の手数料を支払うような仕組みになっていたんですね。それが今では0.1%ほどで済むものも増えてきています。

■王道は「パッシブファンドを低コストで運用」

【宇根】信託報酬は本当に低くなりましたね。現在は競争が始まって、すべての金融機関がそういった良心的なファンドを提供しています。現在、個人投資家としてまず考えるべきは、それらのパッシブファンドを低コストで運用することに尽きるのだと思います。パッシブ投資は世界経済全体が成長することにベットしてるだけですから、個別の企業の業績について深く勉強しなくても単純な収益の源泉について腹落ちすれば投資をすることができます。

もしもっと勉強したいとか、社会貢献として世の中の課題を解決していくような会社を応援したいという思いがあるのなら、運用資産の95%は老後の資産形成のためにパッシブ投資に振り向けて、残りの5%は個別株やアクティブファンドに振るというアロケーション(資産配分)もあると思います。

■「GPIFをパクりましょう」とよく答える理由

【後藤】グローバル分散投資を行うために投資信託を利用するとおっしゃいましたけど、その中でもさまざまな投資先があると思うんですね。株の場合、S&P500もあればグローバル株もありますし、債券やコモディティ投資などいろいろあるじゃないですか。「分散」と言ってもちょっと難しいと感じてしまうビギナー投資家はどうすればいいんでしょうか。

【宇根】そんな方には「GPIFをパクりましょう」とよくお答えをしています。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、長期で老後の資産形成をする日本人向けにカスタマイズされていて、どういう分散をすれば実現できるかを考え抜いたアロケーションをしています。

基本的に日本株25%、外国株25%、外国債券25%、日本債券25%という均等な分け方になっています。その配分の仕方は多少政治的なところがあるとしても、いい分散になっていますし、過去のトラックレコードを見てみると年率で3~4%程度儲かっており、分散投資をしていれば世界経済の成長プラスアルファぐらいは儲かる、ということを実証してくれています。

【後藤】なるほど。

■「4資産均等型」の投信で代用もできる

【宇根】このパクり方をするとして一番労力をかけない方法は、それこそアプリなどでグローバル分散を達成してくれるサービスを利用することだと思います。ややコストは高いですが、それだけでも構わないと思いますし、もう少し工夫できるのであれば、オンライン証券会社の口座を開き、今一番流行している全世界株式の投信を買って、残りを現金で持っておくことでもバランスが取れると思います。

すなわち40~50%ほどを現金で保持しつつ、残りの50%は各社から出ている外国株式のインデックス投資のファンドで運用する、というのがコストも安く王道かと思います。または株や債券にも「4資産均等型」といった投資信託がありますので、そちらを一本買うのもおすすめですね。ほぼ完全にGPIFをパクることができます。

■手数料が高い=良い投資信託とは限らない

【後藤】一つ選ぶなら全世界株を持っておくべきとおっしゃいましたが、残りを現金で持っておくというのはどういうことでしょうか。

【宇根】株にオールベットも良くないので、債券の代わりに現金で持っておくようなイメージです。

【後藤】この際も手数料には気をつけたいところです。

後藤達也『教養としての日本経済 新時代のお金のルール』(徳間書店)
後藤達也『教養としての日本経済 新時代のお金のルール』(徳間書店)

【宇根】そうですね。最近は手数料も加味した上で本当に良心的な投信が、ネットなどの投資信託人気ランキングの上位に載っていますので、その潮流に乗って構わないのかなと思います。

【後藤】買う時に支払う販売手数料や、年々かかる信託報酬などに注目すると良さそうですね。優秀なファンドだから手数料が多めにかかる場合もあるかもしれませんが、手数料が多いからといって必ずしもパフォーマンスがいいというわけではないんですよね。一方でコストは明確に差が出てくるものなので、判断する際にコストの低さを意識するのは大事かなと思います。

【宇根】アクティブ投資になるとまた話は変わりますが、パッシブ投資に関しては低コストでやることが一番大事かなと思いますね。

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後藤 達也(ごとう・たつや)
ジャーナリスト
2022年からフリージャーナリストとして、SNSやテレビなどで「わかりやすく、おもしろく、偏りなく」経済情報を発信。2004年から18年間、日本経済新聞の記者として、金融市場、金融政策、財務省、企業財務などの取材を担当し、2022年3月に退職。2016~17年にコロンビア大学ビジネススクール客員研究員。2019~21年にニューヨーク特派員。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)。

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(ジャーナリスト 後藤 達也)

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